りんりんの毎日のーと

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読書のーと:角田光代著『さがしもの』

 

読書のーと:角田光代著 『さがしもの』

評価★★★★☆

 

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https://www.amazon.co.jp/さがしもの-新潮文庫-角田-光代/dp/4101058245

 

この本は、9編が収録された短編集。

全て本にまつわるお話です。

 

じんわりと心が温まる、やさしいお話ばかりで、

角田さん自身の本への愛が

滲み出ているように感じます。

 

読後は、自分の本棚にたたずむ

一冊一冊の本たちが、

よりいっそう愛おしく感じられました。

 

私のおすすめのお話は、

タイトルでもある「さがしもの」。

 

病床に伏せるおばあちゃんに、

「私」は、一冊の本を探してきてほしいと頼み事をされ、

その本を探し回るというストーリー。

内容もさることながら、わたしは、

おばあちゃんのこの言葉が、強く心に残っています。

 

「死ぬのなんか怖くない。死ぬことを想像するのが怖いんだ。いつだってそうさ、できごとより、考えのほうが何倍もこわいんだ。」

 

初めて読んだとき、ハッとしたことを覚えています。

 

私は小さいころから心配性で臆病で、

何かをやりたいと思っても、

それによって起こりうる悪い結果を想像しては怖くなって、

やりたい気持ちに蓋をしてしまったことが、何度もあります。

 

だけど今振り返ると、

あのとき怖がらずに

正面から立ち向かったり、挑戦していたりしたら、

なにか得られるものがあったんじゃないか

今とは違う自分になれていたんじゃないか

と、そう思って後悔するのです。

 

そして、今までの経験で言えば、

すごく不安に思っていても、

実際に起きてしまえば、現実のこととして受け止め、

意外と対処できたりするんですよね。

 

見えない未来に不安を感じても、

考えたって仕方のないことはあえて考えないという考え方は、

私にとっては特に、必要なものだと思います。

 

これからもずっと

心に留めておきたい大切な言葉のひとつです。

この本に出会えてよかった!

 

 

この9つのお話の主人公たちが出会えたように、

わたしも、

これから色んなことが起こるであろう

わたしの人生に寄り添ってくれる

 大切な本へ出会うことがとっても楽しみです。

 

本との出会いって、人との出会いのようなものなのかもしれませんね。

一度出会った時にピンとこなくても、

何か大きな壁を乗り越えた時、問題に立ち向かっている時など、

本と自分とのタイミングが重なり合って初めて、

微妙だと思っていた本が、生涯大切にしたい特別な本となる。

そんな巡り合わせの要素があるのではないでしょうか。

 

 

読む人によって、

考えることも、

その本に出会ったタイミングも、

その本がその人に与える影響も、

自然と思い返される過去の記憶も、

思い浮かべる未来の姿も、

全く異なるもの。

 

けれど、バラバラなそれらは、

不思議にも、

一冊の同じ本に巡り合ったという点において、

見えないところで繋がっている。

こう考えると、私はとても安心して幸せな気持ちになります。

 

だって、

ページをめくるその瞬間に、

見えない読者に思いを馳せ、

時間は超えても一緒に読んでいるような気がするから。